2008年04月21日

『校長先生になろう!』その1




 今回は『校長先生になろう!』をご紹介します。この本は、実際に民間から杉並区立和田中学校の校長となった筆者が、校長自らのリーダーシップで学校を核に、地域を再生した経験を紹介し、教育のあるべき姿や具体的な学校改革の方法を示したものです。

 筆者は、現在の学校教育の現場が抱える問題の根本はかつて地域・家庭・学校の三位一体で担っていた子供の「社会化」機能が、地域と家庭の機能低下に伴って機能不全に陥っていることろにある、と述べています。その結果学校、そして教師が生徒の社会化を一身に負うことになってしまい、学校もまた機能不全に陥ってしまったといいます。

 「家庭」の社会化機能が果たされなくなったのは、豊かで平和な世の中になって家庭において子供は労働力、すなわち大人になることを求められる必要がなくなり、さらに少子化により子供の希少価値が高まって大切にされるようになったためです。また、「地域」の社会化機能が果たされなくなったのは、「地域」の担い手である町会や商店会の組織率が下がり、高齢化が進んだ結果それらの舞台としての商店街が壊滅状態になってしまったためです。
 
 単純に考えて学校の仕事が3倍に増えたにもかかわらず、少子化を理由に教育予算が削られていること、その結果教員の数も減っていることもこの問題にさらに拍車をかけています。

 以上の現状を踏まえ、筆者は自身が校長を務める和田中学校において、学校を核にして地域、家庭を巻き込んだ三位一体の教育を復活させるための取り組みを始めました。

 まず、「家庭」の機能の復活です。実際には、核家族化や少子化のためにかつてのような「社会化」機能を復活させるのは難しいとして、筆者は具体的に子供の「テレビ」「ケータイ」の使用を制限するべきだと主張します。統計によれば中学生の平均テレビ視聴時間は中学校の「英数国理社」の年間総授業時間数の倍以上です。これでは学校教育がテレビに勝てるわけがありません。

 また、ケータイにのめりこんでしまうと出会い系サイトや有害サイトにはまり、さらに発見が難しいケータイでのイジメに巻き込まれるようになります。ケータイとテレビは中毒性があるので、家庭で制限するべきであると筆者は言います。

 続いて、「地域」の復活です。もともと地域は「ナナメの関係」を通じて子供たちが社会化するうえで重要な役割を担っていました。「ナナメの関係」とは、親子・先生や生徒という「タテの関係」でも友達同士の「ヨコの関係」でもない、近所のお兄さんお姉さん、おじさんおばさん、おじいちゃんおばあちゃんとの関係をさします。この「ナナメの関係」の中の良質なコミュニケーションを通じて、子供は大人になる準備ができていたのです。

 そこで筆者は、この「ナナメの関係」の復活に腐心します。しかしながら地域社会が疲弊してしまっているため、単に学校を地域社会に開いたところでもはや外部からエネルギーは入ってきません。そこで逆転の発想をして、学校の中に「地域本部」を作り、学校を核に地域を再生することを提案しています。

 「地域本部」は学校の中に部屋を持ち、学校の経営を支えるボランティアを機動的に動かす役割を担っています。和田中学校では、「地域本部」は60〜70人のボランティアで運営され、常時十数名が学校を訪れます。そして「地域本部」は主に以下の3つの事業を運営しています。

 1つ目は図書室の放課後の運営。図書室を放課後に地域に開放してPTAのOGなどからなる本好きの図書ボランティアと子供達の交流を図っています。これにより、教室に居場所がない、部活に入る体力のない弱い子供たちが集まれる「第二の保健室」の機能を果たすようになりました。

 2つ目に土曜日学校の立ち上げと運営。土曜日に学校の空き教室を開放し、生徒の自主学習のサポートを学生ボランティアが行う「土曜寺子屋(通称ドテラ)」という、地域主催の自主的な学びの場を開催しました。夏休みにはドテラ・サマースペシャルを実施し、夏休み中もこの自主学習スペースが開講されました。

 3つ目に学校の緑の維持と発展。校庭に芝を植え、その手入れを地域の商店会のお年寄りに任せました。中庭の芝刈りや野菜畑の作物作りを地域のお年寄りと生徒が協力して行う「グリーンキーパーズ」という取り組みが続けられています。

 このように、子供たちの豊かな教育のためには必要だけれども、教員にとっては余計な仕事になるものを「地域本部」でボランティアが行っているのです。そうすることで教師は本業(授業や部活、放課後遊び)に集中し、生徒に向き合う時間を増えすことができます。

 また学校の中の「地域本部」に異なる文化、経験を有する人たちを誘致し、新しいコミュニケーション、「ナナメの関係」を育むことができます。

 そして「地域本部」は治安の面でも活躍します。地域に開いた学校は常に地域の人が学校に出入りするために不審者を見つけやすく、犯罪者に対する抑止効果もあります。地域の目で学校を守るというわけですね。

 その2に続く。


(written by tomoya)
ラベル:事例研究
posted by ideamix at 10:02| 教育像の探求 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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