2008年06月12日

New Ecudation Expo 2008 情報モラル教育の巻

 土曜の午後のセミナーは情報モラル教育に関するものでした。弊社ではケータイリテラシー教材の開発に取り組んでおり、その参考になるのではないかと考えて参加させていただきました。

 前半は滋賀大学教育学部の宮田仁先生による講義で、子供たちがケータイを使うことでどんな問題に巻き込まれているか、どんな問題が発生しているかという現状をご紹介いただきました。後半は松戸市立馬橋小学校の佐和先生による講義で、総務省の開発した教材である「伸ばそう ICTメディアリテラシー」の実践例をご紹介いただきました。ここでは、前半の宮田先生のお話を聞いて考えたことなどを述べようと思います。

 宮田先生は講義を通じて、プロフや無料ゲームサイトなどの事例を紹介し、子供たちが今どのようなリスクにさらされているのかをわかりやすく、具体的に説明していらっしゃいました。そこで見られるリスクは、知らないうちに子供たちの個人情報が漏洩する、犯罪に巻き込まれる、過度のケータイ(ネット)への依存がみられるなどさまざまですが、いずれも大変深刻な状況です。

 そして、ケータイリテラシーの教育でとても難しいのが、生徒の心理をきちんと読み取らないと知識を身につけさせることはできても具体的な実践にうつさせることはできない、ということです。2つの例を紹介しましょう。

 例えば、「不当請求メールが来たときには親に相談しなさい」と生徒に伝え、わからせたとしても生徒はそれを実行に移せない場合があります。それは例えば、そのようなメールが来たことを告白すると、親に「インターネットで変なサイトを閲覧するからいけないんだ」と言われてケータイを取り上げられてしまうのではないかと生徒が考えているからです。

 したがって、宮田先生は家族の中でケータイに関するルールをもうけるのはよいことだけれども、決して親は子供のケータイを取り上げるというような約束をしてはいけない、と仰っています。それよりも、何かがあったらすぐに相談し合えるような関係を築くことが大切であると。

 また別の例として、チェーンメールが取り上げられていました。子供たちの大多数はすでにチェーンメールを転送してはいけないということを知っているようです。ところがわかっていても転送するような子供が一定の割合で存在します。それはなぜでしょうか。実は、チェーンメールを送ってくる人はたいてい親しい友人であり、その友人との人間関係に配慮しているというのです。自分が転送を止めてしまったことがきっかけで、その友人との関係に亀裂が入るのを恐れているわけですね。

 このように、頭ごなしに「対策」を子供たちに訴えても効果は高くありません。子供の心理を十分に把握し、彼らがその対策を実践に移せるようなサポートや環境づくりを、私たち大人が果たせるようにならないといけないのです。

 もう1つ、私が個人的に難しいと思うのは、生徒たちは幼いころからケータイに触れていて、ネットとリアルの境界をあまり意識しないまま育っているという点です。というのも私たち大人は、ある程度までリアルの世界だけを生きて、そこでモラルやコミュニケーションといったものを身に着けてから全く別の領域であるネットの世界に入りました。だから、リアルで学んだことをネットの世界でも暗黙の了解として応用し、守ることができるのです(できていない例も多々見受けられますが)。

 一方で子供たちは、リアルで一人前のモラルやコミュニケーションを身に着けることがないまま、いきなりリアルと同じような感覚でネットに入り込んでいます。そして我々のような世代よりも、彼らの中ではリアルとネットの境界が曖昧だと考えられます。それゆえに、ネットの世界の出来事をリアルの世界の出来事に対応させて考えることができていないのではないでしょうか。

 宮田先生が仰っていた「プロフに自分の顔写真を載せることは山手線の中吊り広告に自分の顔写真を載せるのと同じことだ」という例は非常にわかりやすく、そのようにリアルと対応付けてリスクを説明することはとても説得力があると感じました。恐らくリアルとネットを明確に区別していない子供たちにしてみれば、そのような「対比」が可能という感覚すらもっていないのではないでしょうか。子供たちにケータイリテラシーを身につけさせるには、そのような「リアルとの対応づけ」を示していくことが大切かもしれません。

 宮田先生はケータイは使い方によっては効果的な学習ツールになる可能性があり、実際にご自身でもそのようなシステムの開発をされているそうです。子供に携帯電話を持たせることを禁止するような動きもみられる昨今ですが、すでにこれだけ携帯電話が普及してしまっている現在、子供たちが携帯電話をうまく使いこなして自らにとってプラスにしていけるように、教育という切り口から解決策を探っていこうと思います。


(written by tomoya)
posted by ideamix at 17:04| 教材開発 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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