2008年06月12日

New Education Expo 2008 地域の教育力の再生の巻

 土曜日の朝一番のセミナーに出てきました。講師の先生はお二人いらっしゃって、そのうちのお一人の杉並区の教育長である井出隆安先生が教育改革について語られるということで、おそらく杉並区立和田中学校の話題が出るだろうと予測しての参加でした。そしてもう1人の慶応大学の金子郁容先生は、後から気付きましたが『チェンジメーカー 社会企業家が世の中を変える』の解説を書かれている方でした。そしてテーマはずばり、「地域の教育力の再生」。

 お二人の先生方によれば教育改革を実現するにはなるべく現場に権限を移す必要があるとのこと。国は予算を投資することに集中し、実際の施策は自治体が戦略を立て、実行するという分業が必要であるといいます。(フィンランドやオーストラリアの教育の勉強をしていると、このあたりをすっと受け入れることができます。)

 しかしながら、日本では教育改革ははじめにトップダウンで教育委員会がしくみを整備しなければ進まない(現場からは実行しづらい)傾向にあります。まずしくみを作ってから、現場へと権限委譲するというのが順序であり、今の杉並区はまさに現場への権限委譲フェーズにある。それゆえ一時メディアをにぎわせた和田中の夜スペの導入も、杉並区は現場の声を尊重して賛同したのだそうです。

 さて、セミナーでは杉並区のほかにも三鷹市、京都市が地域の力を生かした教育改革の成功例として紹介されていましたが、ここでは杉並区にフォーカスして内容をご紹介します。基本的に、和田中のモデルをさらに区全体に拡大するという印象であり、和田中の取り組みは地域の教育力の再生に一定の成果をあげたという評価のようでした。

 杉並区は井出先生が教育長になられてから、「いい町はいい学校をつくり、学校づくりは町づくりとなる」という仮説のもと、「教育立区」を目指しています。そのために4つの施策を進めてきました。

 第一に教員の独自養成および任用です。区費で独自に教員を採用しているということですね。そして教員養成学校として平成17年に師範館を設立しました。すでに、卒業生が数十人単位で杉並区の学校で活躍しています。

 第二に30人学級の展開です。これは、区費教員の採用によって教師を学校に加配することで実現しています。

 第三に学校経営の改善です。具体的には、和田中学校の藤原先生のような民間からの校長の採用。そして副校長を各校に教務担当と経営担当の合計二人を配置するという内容です。民間校長については藤原先生が著書で大いに語っていらっしゃいますが、経営担当の副校長もまた、教員プロパーではなく外部の経験者を採用する方針のようです。

 そして第四に地域運営学校の普及です。杉並区では平成22年までに区内の全校に学校支援本部(和田中の地域本部に相当)の設置を目指しており、これまでに7校を地域運営学校に認定しているそうです。そのために急務なのは学校支援本部の中核となる、地域側のリーダーである学校教育コーディネーターの養成であり、そのような人材育成のほかに、土曜日学校運営、放課後居場所事業、PTA研修といった事業をNPO法人であるスクールアドバイスネットワークへ委託しています。

 杉並区では現在まさに、これらの4本の改革が進行中であり、その成果は今後の日本の教育の行方を占う試金石となりそうです。和田中では一定の成果をあげた(と考えられている)「民間校長」「地域支援本部を核とした地域の再生」ですが、はたして区全体で通用するものなのか、大変興味があります。(ただし、杉並区は教育予算が他の地域に比べ潤沢であることに注意しなければなりません。杉並区で成功したとしても、そのまま他の区にも移植可能かどうかは定かではないといえるでしょう。)

 どちらが先かはわかりませんが、「いい町はいい学校をつくり、学校づくりは町づくりとなる」という、「町(地域)」と「学校」が密接に連携してプラスのサイクルを生み出すというあり方は、私個人としても大いに自分の模索する「教育像」に求められると考えており、杉並区の教育改革からは目が離せません。


(written by tomoya)
posted by ideamix at 01:17| 教育像の探求 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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